特色の掛け合わせで色を指定するデザインの場合、シミュレーションしながら作業できるととても便利です。レイヤーのターゲット化で、レイヤー上の複数のオブジェクトの属性をまとめて設定でき、これを利用すると、版を重ねた状態をシミュレーションできます。
2013.07.02
記事内に、『Illustrator ABC』の関連ページが記載されています。そちらもご覧いただくと、機能やメニューについての理解が深まります。
赤インクで刷る部分と、緑インクで刷る部分の、最終的な状態です。緑インクの濃度を淡めに設定して重ねて印刷することで、バラの花に陰影を加えています。
混色部分のシミュレーションは、レイヤーのターゲット化を利用して、レイヤーの描画モードを[乗算]に変更するという手を使っています。レイヤーの属性自体を変更すると、この場合、そのレイヤーに描画したものはすべて[乗算]になります。
ターゲットレイヤーを使うのにはほかにも理由があり、オブジェクトを個別に[乗算]に変更すると、左図のように、同色のオブジェクトどうしの重なりも一段濃くなってしまうんですよね。レイヤーの属性を[乗算]にすると、そのレイヤー上のオブジェクトどうしの重なりは[乗算]にならないので、単純に版を重ねただけの状態をシミュレーションできるわけです。透明パネルの「グループの抜き」も似たような機能です。
左が[通常]、右が[乗算]に変更したものです(赤版は非表示です)。背面に紙の色に似せた長方形を敷いておくと、紙に印刷して一段暗くなった状態も、シミュレーションしながら作業できます。
※ただしあくまでどのくらいその色に濃さ(強さ)を追加できるかのシミュレーションで、実際の印刷物の混色具合とは大きく差があることもありますよ。
複雑な部分は、ライブペイントを利用して塗り分けています。これは赤版を非表示にした状態です。濃度ごとにグローバルカラーで指定すると、濃度をまとめて変更できます。
こちらは赤版を表示した状態です。緑版を重ねた部分が濃い色になっているのがわかります。こんなふうにほかのインクをうっすら重ねると、影色をつくることもできます。ちょうどいい濃度って刷ってみないとわからないので、できるなら試し刷りしたいとこですが、時間ないと賭けみたいな感じになりますね。切実に混色表が欲しいです……。経験的には、「えっ」て思うくらい薄めに設定しても、けっこうはっきりでます。
ノックアウトにするところは、色が乗らないように処理しておきます。これもライブペイントを利用すると簡単です。
ライブペイントって、Adobeのプレゼンとかを見ると、こんなのイラストを描くひとしか用がないでしょ、っていう印象になると思いますが、細々とした処理にほんとに向いてます。パスファインダーの分割と色の設定が同時にできるような感じなので、実際は型抜きとか穴あけなどの作業にとても便利です(わたしはほとんどそういう用途に使っています)。
これも最終的に、色ごとに墨1色の版をつくります。ライブペイントを拡張したあと、特色の濃度をKの濃度を指定しなおしていくだけです。これも共通選択が便利です。レイヤーの属性は[描画モード:通常]に戻しておきます。
一般的な、墨1色の版に分けなくてよい場合は、おそらくオーバープリントで設定することになるんじゃないかなあと。もしくは、08のように、CMYKのいずれかを組み合わせて版をつくり、置き換えインクを指定するかあたりだと思います。この場合、シミュレーションできないのがつらいですが(『消しゴムはんこの魔法』の帯は特色2色刷りですが、マゼンタとイエローの組み合わせで版つくって、このインクに置き換えてください、で入稿しています。使った特色自体もほぼマゼンタとイエローみたいな色だったので、とくに困らなかったですが)。